風と水の丘 mount of wind & water
2017年 伊予西条糸プロジェクト住宅設計コンペティション
愛媛県西条市で2017年に「糸プロジェクト実行委員会」主催、「新建築社」後援、「東京大学隈研吾研究室」協力で行われた、9組の設計者を選ぶ設計実施コンペ。325組(応募493組)から最終審査の17組まで選ばれる。 コンペが行われた西条市は うちぬきと呼ばれる地下水が豊富で、水道を地下水ですべてまかなう地域があるほどである。その一方で急傾斜の石鎚山系と瀬戸内海に挟まれたわずかな平野部に位置するため、沿岸部や主要河川周辺では津波や洪水の面でのリスクが高いという、自然の二つの面が大きく浮かび上がるエリアである。
コンペ後の2018年の西日本豪雨、2019年の台風19号と近年、台風や豪雨災害が多く見受けられる。気象家の見解では、今後もこの傾向はますます活発化が予想されると言われる。2017年のこのコンペで、住民が集い、自然に寄り添う暮らしのかたちを提案したことは、一つの意味があったと感じる。
「風」と「水」の自然の恵みを活かし、自然の脅威と寄り添うことで、そこにしかない風景が生まれる。
集い 寄り添う 西条の暮らし
石鎚山と瀬戸内海によって生み出される「風」と「水」。 西条の人々は、この「風」と「水」から恵みを享受し、 自然の脅威と寄り添い、古くからくらしてきました。
これまでに蓄積されたくらしの技術に加えて、 新たなくらしの技術を付加することでより豊かで 家族が安心して暮らせる、次世代へと続く西条のくらしを提案します。 自然の恵みと脅威へ寄り添う姿勢は、一つの共通のすがたを導きます。その共通のすがたは古くからの集落のように、 住戸群に共に生活する一体感を生み出します。
住戸が自然環境から導かれた配置で寄り添い合うことで、 柔軟性に富んだ自然への振る舞いを獲得します。そして、 この地に集った家族が共に生活する風景を作り出します。
その場所の群としての固有のくらしは、地域の恵みを保全しより豊かなかたちへと導きます。その恵みはより多くの人を惹きつけ、都市/地方、世界/地方との交流の端緒となります