2100年代は人口は1960-70年代の松山市? 地区人口統計と過去の航空写真から見る

松山市創生人口100年ビジョンにみる、松山市の2100年の将来人口

松山市が2016年に出している「松山市創生人口100年ビジョン」によると、2030年に合計特殊出生率1.75程度、2040年以降は2.07程度まで改善され、2020年以降は社会増減が均衡と仮定した場合、現在の50万人程度から2100年頃には30-40万人あたりの人口規模に落ち着くと予測されています。この人口規模は大体1970年代あたりの人口規模と同じになります。条件設定を見るとかなりポジティブな内容の予測だと思いますが、一つの未来の像としては指標となるのではないでしょうか。

もう少し厳しめの予測で見ると、国立社会保障・人口問題研究所が毎年出している「日本の地域別将来推計人口」があります。2023年に出された推計によると松山市は2050年までに42万人程度まで縮小する予測が出ています。こちらの推計手法に準拠した場合は松山市創生人口100年ビジョンによると2100年には20万人を下回る可能性も示唆されています。これは1950年代から1960年代の松山市の人口規模にあたります。

両者の隔たりを考えると、前者は渇水で悩まされる石手川ダムが建設当初の1950年代に都市計画上想定していた将来ピーク人口の37万人という数値や前者の資料で説明される現在の経済規模を維持するために必要な人口規模から産出された目標値であり、その目標値から逆算した必要条件として出生率であるのに対して、後者が現状の状態を続けた場合の予測される人口数値という違いがあるように思えます。

現在、70年代、60年代の航空写真

下の航空写真が国土地理院の地理院地図(電子国土web)の左から①現在の航空写真、②1970年代の航空写真、③1960年代の航空写真です。1960年代の航空写真を見ると田んぼのエリアが中心部周辺でもかなり多かったことが見て取れます。祖父母から聞いた話しだと小栗でも周りが田んぼで小中学校が家から見えた言ってましたから航空写真のイメージ通りだったのだと実感します。

増える空き家や空き地 と 植物や動物たち

この頃の状況まで農業人口が再び増加することは松山市内ではないのかもしれませんが、人口規模で考えた場合の空きスペースというと寂しい感じがしますが、機能する宅地ではないエリアが存在する状況というのを想像すべきだということだと思います。

そこは空き家で朽ち果てるのを待っているだけのエリアになっているかもしれないし、空き地で草ぼうぼうになっているかもしれないし、小さな公園になって管理されているかもしれないし、可能性は低いと思いますがまとまった都市計画が再び実行されて農地や緑地となって管理されているかもしれない。私たちが自分たちの住む地域の未来像を想像する上でこの航空写真はひとつの指標になるように個人的には思います。

先日、自分の近所の空き家に猫が子猫を産んでいるということで、人が集まってましたが、空き家や空き地は人以外の動物も住む可能性のあるスペースです。そういった動植物との付き合い方も大事になっていくでしょう(農業もまた食糧生産面だけでなく都市計画・まちづくり的な観点から見れば、人と動植物との付き合い方のひとつのかたち、治水面でいえば自然環境との付き合い方のひとつのかたちです)。

60年代、70年代から変わったライフスタイル

1960年代、1970年代と現代ではライフスタイルも異なります。世帯当たりの子供の数は減っていますが、家具が増えて面積は大きくなっています。当時の愛媛県の1戸あたりの平均床面積は70m2、76m2ですが(ちなみに1950年代は全国平均になりますが床面積は60m2程度です)、それが今では85.3m2、持ち家一戸建てのみにすると108m2程度(一時は140m2程度まで上昇していたようですが景気とともに下がってきています)です。

今ある空き家を利用するにも自分たちのライフスタイルを変えるのか?空き家・空き地を改造して自分たちのライフスタイルに合わせるのか?そういった選択が必要になります。

例えば空き家をただ放置するのではなく税優遇などと組み合わせて、子育てのステップに応じて生じる子供部屋は地域で空き家をシェアすることで、子育て世代の住宅資金のサポートを行うというような仕組みとかも出てくるのかもしれません、しかしそういったことも自分たちの地域像や地域の現状・立ち位置をしっかりと共有しなくては長続きはしていかないでしょう。そういったイメージを把握する上でも、人口規模のイメージ、そして将来の人口規模と同程度の頃の様子を具体的なかたちを示すひとつのツールとなるように思います。

松山市と全国の年齢別人口比率の比較

2100年には1960年代や1970年代のような人口規模になるということを頭に入れた上で、現在の人口の内容を見ていきます。松山市の地域別・年代別の人口数は松山市がホームページで「地区別年齢別住民基本台帳登録者数」を公開しているので、そちらから確認することができます。先日、愛媛県は20の自治体の内の12が消滅可能性自治体になり、南予のほとんどがそれに該当するようなことが発表されました。松山市は県庁所在地だけあり、消滅可能性自治体ではないですが、市域のすべての地域が同じような状況にあるわけでは当然なく、そのなかでも人口流出や高齢化が進む地域もあれば、人口流入や若年化が進む地域もあります。松山市の「地区別年齢別住民基本台帳登録者数」からなにが見て取れるのか?少し深掘りしてみたいと思います。

全国平均と松山市平均 は ほぼ同じ

まず松山市全体の高齢化の状況は、ほぼ全国平均と似たような状況にあります。個人的にはこれは意外でした。四国と言えど県庁所在地なので少し若いくらいなのかと勝手に思っていましたが、全然で、平均くらいの状況です。10代は全国平均より割合が多く、20代から30代が全国平均より下がっているのは大都市圏へ若い人を取られている状況をはっきりと示しています。

この傾向が以前から続いていることは現在の70代(団塊の世代)が全国平均よりも下がっていて、出たまま戻ってきていない人数がやはり多かったことを物語っています。都市部への人口集中・資本集中の傾向は物理的なインフラの効率化を考えると止まる理由はないので、意図的な政策が行われない限りは引き続き進むと個人的には思っています。そういう観点で創生人口100年ビジョンの社会増減が均衡という仮定はかなりポジティブな考えだと思います。都市圏への若い世代の吸収の状況は東京を比較対象に加えるとより顕著に見えてくると思います。

少子化は国の問題ですが、地方の問題は人口流出で養育費などが改善されて少子化がなくなっても人口問題が解決されるわけではなく、地方が教育に投資した資金も時間も、その効果は都市部持っていかれるというのが現状の構造ではないでしょうか。このあたりは少子化が問題になる前の1970年代に現在よりも深刻な過疎化・人口流出が進んでいた南予などの状況を見ても参考になるように思います。

各地区の特徴などは松山市社会福祉協議会が地区カルテとして、それぞれまとめてますので、そちらも参照すると上の世代の方々の視点から見た地区の状況というのが見えてきやすいのではないかと思います。世代間で共通する部分、違う部分を考えていく上で良い資料だと思いますし、どの地区でも共通して若い世代と高齢世代の交流の低さが課題として挙げられているので、大事なことに思います。

次に、各エリアごとに年齢別の人口比率の確認と現在と過去の航空写真の比較をしていきましょう。

11960年代、1970年代、そして現在の松山 2松山市域の中心部の年齢別人口比率の状況 3松山市郊外エリア 子育て地域 4松山市郊外エリア 高齢化進展エリア

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