世界時間Ⅱ

独占・競争・自給の三つの階層がつくる幾筋もの流れ
第三部:世界時間の二冊目。ヨーロッパの世界=経済を見てきた一冊目から変わって、アメリカ、アフリカ、ロシア、トルコ、極東(インド)と、ヨーロッパ以外の世界=経済を見てゆき、最後に産業革命の時代を確認していく。
ヨーロッパの発展を支えたアメリカ
ヨーロッパの縁辺として扱われたアメリカ大陸。ヨーロッパの近代性の大きな一助となる。スコットランドやアイルランドからの囚人、イギリス各地の植民地の流刑囚などの白人奴隷やインディオたちからはじまり、黒人奴隷とともに、古代、中世、ルネサンス、宗教改革などが混ざりあいながら、砂糖と資本主義と奴隷制度が肩を並べて行進する。
三角貿易を支えたアフリカ、搾取されたアフリカ
アフリカはヨーロッパの帝国主義とイスラム圏の帝国主義の両方から搾取された。その影響が生み出した構造は単純な一方的な搾取だけではなく、アフリカ人自身による奴隷貿易への協力、時には自分自身の両親や子ども、兄弟姉妹を奴隷として売ることもあった。
それは現代においても影響を受け続けている。同時に見なくてはならないのは、それだけの大規模な交易を可能とする商品の輸送システムがアフリカに備わっていたということである。
大きな村だったロシア
シベリアのやわらかい金と称された毛皮によって財をなし、その影響によって産業化は停滞し、都市機能は発達せずに長い間留まり、ロシアとは膨大な村だ、と言われた。
産業化/鉱山開発の足取りは18世紀初頭にアメリカの毛皮産業が競争相手として登場した後からであった。そしてその鉱山のかたちは自国の囚人をはじめとした強制労働者たちの力によって為された。
古くからの商業圏域トルコ
イスラム世界の経済帝国の中心として、黒海と紅海そして砂漠の隊商たちに支えられたトルコは、その古くからの商人集団によって自分たちの商業圏域をヨーロッパから守り続けてきていた。逆にその古い商業慣習の優秀さゆえに、ヨーロッパで発達した商業技術(信用貸しなど)は発達が遅れた。
恵まれた自然環境とその自然がもたらした交易によって古くから貨幣経済が根づき(今日においてもなお貴金属の消費地として君臨し続ける)、
世界の職人だったインド
全世界からの需要に、何百万という職人が古き良き手仕事による日々の生産に追われていた状態から、アメリカ大陸の銀によって扉を開かれ19世紀には産業化されたイギリスとの競争によって非産業化され、原料供給者の地位に引き戻されたインド
産業化の時代-経済成長を可能にするもの と 経済成長の仕方
産業革命を最初に経験したイギリスを含め、15世紀から18世紀の長い近代化/産業化の過程は働く者(人力)を犠牲にして生産性を高める国民所得の時代であり、積み上がっては崩れ、繰り返される運動によって様々なバリエーションの構造/資本主義を生み出した。
イギリス以前の国々の産業化を阻んだのが農業であれば、イギリスの産業化を助けたのも農業であった。国内、国外含めた高い農業生産性が増加する貧しい国民/労働者を基盤から支えた。
その爆発した人口増加がもともと少なかった森林を木炭消費で食い潰して、より安価な石炭の時代の到来をもたらした。世界の職人だったインドの木綿から世界の工場として国際競争に勝ち、産業化の時代がはっきりと幕を上げる。
1750年に今日の先進諸国のGNPの合計はその他の国々の合計の1/4程度だった。それが産業革命後の貧富の差が広がり、1880年から1900年頃に追い越し、1976年にはおよそ3倍となっている。
「経済成長を可能にするもの」は国家や社会や文化といった様々な要因のあいだの構造的関係にもとづいて緩やかに獲得されるものであるのに対して、「経済成長が実際に生ずる仕方」は短期的な状況(経済以外の要因も含め)に左右される。
バリエーション・世界に多様性を生み出すものとは?
どちらも経済成長には重要なものであり、この長い書物でも繰り返し現れるように、長期と短期が重なりあい、均衡のとれた成長と不均衡な成長の両方が現れる。そしてそれが様々なバリエーションを生み出す要因ともなっている。
15-18世紀の歴史を読む意義は、このバリエーションがどのように生まれ、今日にどのように影響を及ぼしているのか?を知ることではないかと思う。成長は全ての領域・空間で同時に起こらず、偏在しており、成長の速度・方向性の違いが世界=経済の構造を新たな方向へと導いていく。
「独占的資本主義(独占価格/大企業)」と「競争的資本主義(競争価格/中小企業)」と「非市場経済の領域(無償の労働/家事・自然環境)」というおおまかな区分だけでも、古いものと新しいものが混在して、相互に働きあって、経済も、社会も、国家も、文化も動いていることがわかる。
家事の領域で、子どもが生まれなければ、資本主義へは労働者は供給されない、逆に両方の資本主義から様々なサービスが供給されることで現代社会の出産と人口(低い出生率と低い児童死亡率)は維持されている。
この古いものと新しいものが混在した世界の、各ポイントで、その相異なる要素を滑らかに噛み合わせるための努力をする必要があるのだと本書を読んで感じる。

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