愛媛県東温市上林森林公園風穴
愛媛県東温市(松山市の東隣)にある風穴で、久万高原との境にある皿ヶ嶺の中腹あたりの急こう配から緩勾配へと斜面が切り替わるところにあります。
1500万年前の石鎚火成活動によって形づくられた皿ヶ嶺連峰の安山岩が崩壊して岩石が堆積した崖錐タイプの風穴です。
令和五年に国の登録記念物(登録有形文化財の史跡名勝版)に指定されています。
皿ヶ嶺のような台地状の地形は同じように1500万年前ごろの瀬戸内火山活動によって形づくられた香川県の屋島があります。

近くの駐車場から遊歩道で150m程度/徒歩5分程度、夏は近くでそうめん流しもやっている

上部の急勾配の崖が崩壊して下部の緩斜面に体積した崖錐(グレー部)に風穴がある
日本中で行われていた養蚕
東温市(前身の重信町)では1887年(明治20年)頃に養蚕がはじまり、1930年(昭和5年)の昭和恐慌(アメリカの世界大恐慌1929年が日本に波及したもの)で生糸の輸出先であるアメリカ経済が停滞し、生糸価格が暴落するまで積極的に行われていたとされています。
戦後も山間部で養蚕が再開しましたが、復活とはなりませんでした。

東西5m、南北4.3m、深さ2.4mの石組みの穴が設けられており、現在は存在していませんが養蚕の蚕種保存に使用していた頃には上部に覆い屋が存在していたものと思われます。
石組みにはびっしりと苔が生えて、常に涼風によって気温が下がり湿度の高い状態が保たれていることがわかります。夏には外気と風穴内の気温差によって霧や靄が発生して、神秘的な風景が演出されます。
石組みが設けられた時期ははっきりしませんが明治20年代から大正期(1900年前後)の生糸輸出が増加しはじめた頃に築造されたと推定されています。
香川の風穴と比較すると上林の風穴の石組みは比較的ラフに積まれているので、もしかすると養蚕農家たちが自ら積んだものなのかもしれません。
堆積している岩石からも吹き出してくる冷風
風穴はこの石組みだけでなく、その上部の堆積している岩石からも出てきており、他の風穴の石組みを組む前の状態がどのようなだったかを想像する上でわかりやすい事例となっています。
東温市の名勝調査報告書によると下部幅25m、上部幅約50m、奥行き約30mのかなり広い範囲で吹き出していることが確認されています。

上林の風穴では石組みだけでなく上部の堆積している岩石からも涼風が吹き出す。冷たい涼風によって苔の絨毯が岩石の上に広がっている。

風穴内は9月末に最高気温約10℃、2月中旬に最低気温約-1℃で、年間の気温差およそ11℃と外気温に対して安定した温熱環境を作り出されている。
上林の風穴は石組みの周りに柵が巡らされているので他の風穴のように内部に入ることができないですが、この堆積した岩石には側までいくことができるので、直接冷風が吹き出してくることを体感することができます。
この冷風によって周囲の気温が下がり湿度が高くなることで苔が繁殖して緑の絨毯がつくられています。
四国の他の風穴では石組み部のみで涼風が吹き出してきているので、このような緑の絨毯を見ることはできないので、石組みに注目しがちで、石組みだけ見て帰ってしまう人も多いですが、この堆積した岩石の風穴もぜひ体験してみて欲しいところです。



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