気象庁の長期予測の結果(日本の気候変動2025)によると、これから温暖化の影響で夏のモンスーンが強まり、冬のモンスーンが弱まることが予測されています。
夏のモンスーンが強まることの影響は、海面温度が高くなることで赤道からの水循環のエネルギーの増加によって偏西風が北へずれていくことが一つの引き金になっています。これによって夏の長期化や年ごとに変動する猛暑、南からの暖かい湿った空気の集中する場所のズレが生じるかたちで現れます。
四国ではこれまで以上に四国山地を挟んで南北での夏の違いが強まり、高温多湿化・多雨がさらに進行する南側・太平洋側とフェーン現象で少雨・乾燥と高温化が進行する北側・瀬戸内側というかたちで影響が現れることが予測されます。



冬のモンスーンの弱まりも、夏と同じように偏西風の位置が北側へ寄ることが関係しています。
まず日本全体の地球温暖化による冬の暖冬化を見ていき、次にそれが四国の冬にどのような影響を与えるかを見ていきたいと思います。
これまでの日本の冬をつくっていた大気と偏西風の動き
これまでの冬の偏西風は日本の上空やそれよりも南側を流れていました。これは冬は北極圏をはじめとした高緯度の気温が低下して高気圧が発達するため、それに押されて夏よりも偏西風が南に南下するためです。
このとき日本の西側ではチベット・ヒマラヤ山脈の北側でシベリア高気圧が発達するのに対して、日本の東側ではアリューシャン低気圧が勢力を強めます。これが西高東低の冬型の気圧配置となり、シベリア高気圧の縁を時計回りに風が吹き、北からの冷たい風が日本へと吹き込みます。
これがこれまでの日本の冬の北風の仕組みでした。

偏西風が北へ寄り、寒さが届きにくくなる
これが北極圏をはじめとした高緯度地域が温暖化の影響で暖かくなっている影響で、寒気の重みが高気圧の発達させる力がこれまでよりも弱まり、偏西風を南下できずに、これまでよりも北側に寄るようになります。
これによって冬の北風が日本まで届きにくくなり、特に日本の南側・西日本での冬の北風の低下や寒気の流入の低下が予測されています。
北極圏をはじめとした高緯度は地球全体のなかでも温暖化による気温上昇が大きく生じている地域になります。これには二つの要因が主に働いていると考えられています。
一つ目は温暖化で雪や氷が溶けることで地表面が暖かくなり蓄熱し、それがさらに周囲の雪や氷を溶かす正のフィードバックループとなり、気温上昇の作用を高める働きがあります。
二つ目は赤道付近では温暖化の影響で水蒸気圧が高まり、水の熱輸送によってエネルギーが上空へ運ばれ、それが夏の偏西風の位置を押し上げて、日本へと暖かい空気をもたらしていましたが、北極圏では気温が低いため水蒸気による水の熱輸送が働かず、地上付近で滞留する傾向があります。
この違いが赤道付近では熱が周辺へまき散らされることで気温上昇が抑えられるのに対して、北極圏では逃げずに蓄えられ続けることで気温上昇が加速するという結果をもたらしています。
このため冬のモンスーンの弱まり=北風の影響の低下は北日本や北海道などを除いて、しばらくは常態化するものと考えられています。

冬のモンスーンの弱まりは北風の影響の低下の他に、冬の短期化をもたらすと考えられています。これは日本だと春一番の早期化というかたちで現れます。これまで3月からだったものが2月あたりから春一番が吹くようになってきています。
春一番は冬のシベリア高気圧の影響が弱まり、移動性の低気圧が偏西風に乗って日本へ流れてくることによって生じます。春一番はこの流れてきた移動性低気圧に対して、南から風が吹き込むようになることを指します。
地域で変わる寒さの変化
日本全体の長期予測で示されている内容を四国の各地点の観測結果から見ていきます。
先に概要をまとめると下記のようになります。
- 冬の北風の弱化による平均風速の低下が瀬戸内海側を中心に四国全域で起こる
- 北風の弱化によって空気の乱れが減り、内陸部山間部で夜間の放射冷却が促進
- 四国山地を後背地にもつ瀬戸内側では山からの冷気で夜間の気温低下が促進
- 北風の弱化によって熱損失が軽減されて、冬の日射熱による気温上昇が四国全域で促進
- 内陸部や瀬戸内側で昼夜の寒暖差が広がる傾向となる

四国でも全体として冬の北風は弱化傾向
長期予測で示されているように冬の風速が低下傾向にあり、特に瀬戸内側での低下が強い傾向があることが見て取れます。ただし愛媛の中予・南予では微増というかたちになっており、今後さらなる地球温暖化の影響の強化と冬のモンスーンの弱化によって減少へ振れるようになるのかは注目が必要です。


四国の冬の最低気温は内陸部・瀬戸内海側では放射冷却の影響で下がっていく傾向
冬の北風の影響が小さくなることによって、では冬の気温はどのように変化しているのかを次に見ていきます。
冬の北風の影響が小さくなることで気温が上がっていくのかと思いきや、愛媛県瀬戸内側の東予での最低気温の低下が顕著に見られます。


これは風が弱くなったことによって空気の攪拌が小さくなり、放射冷却がより強く働くようになったことが影響しているのではないかと思われます。四国の内陸部の日最低気温の推移を確認するとほとんどが気温を低下させていることがわかります。
内陸部のデータを見ていくと、わずかに気温上昇するに留まっている多度津の上流にあたる財田では気温低下が見られます。
瀬戸内側で特に気温低下が著しい新居浜や四国中央は後背地に四国山地・石鎚山脈を抱えていますので、山からの冷気をつくりだすエンジンの違いが、財田と新居浜・四国中央との違いとして現れているように考えられます。
例外的に香川県の香南が気温を上昇させていますが、これはデータが2003年移行になっていることが影響しているものと思われます。但し2003年以降の比較では他も新居浜以外はマイナス傾向を緩和させますが、香南は特別に高い上昇傾向を示す地域になっています。
この下流・山下に位置する高松では最低気温が上昇傾向になっているので、山からの夜間の冷気の流入自体も温暖化した結果が、気温の上昇に影響していると考えられます。

最高気温は全体的に上昇傾向、内陸部・瀬戸内側は昼夜の寒暖差が広がる地域が出てくる
日最高気温をみていくと、全体で増加傾向が見て取れ、冬の北風の低下・モンスーンの弱化による気温上昇の効果がしっかりと現れていることがわかります。
内陸部が基本的には最高気温の上昇傾向が強いです。これは最低気温の傾向とは対照的です。冬の昼夜での寒暖差の拡大傾向が見て取れます。
高知、西条、引田、松山が上昇傾向が高く、特に高知と松山は冬の日最低気温も上昇傾向なので暖冬傾向がはっきりとみられます。松山では日最高気温の方が上昇傾向が強いので昼夜の寒暖差が広がる傾向があることがわかります。
次に上昇傾向が強いのが高松、多度津、四国中央、新居浜といった瀬戸内側のグループです。こちらも冬の昼夜の寒暖差の拡大傾向が強くなっていることがわかります。
最後に上昇傾向が緩いグループとして、徳島、今治、室戸岬のグループです。こちらのグループも2000年以降の傾向で見ると冬の最高気温は高い上昇傾向を示しているので、理由はわかりませんが、今後は上昇局面に入っていくのかもしれません。




このように冬のモンスーン・北風の弱化という長期的な共通の影響を受けても、四国のなかでも場所によって影響が異なります。
夏の地球温暖化による長期的な影響は「雨が多い高知と雨が少ない高松!四国の気候と地形が建築を変える」で書いた四国山地を挟んで異なる二つの傾向をさらに強化するかたちでしたが、冬の地球温暖化による長期的影響はこれまで見てきたように新しい地形と冬の気候の関係を示しているので、変化の傾向に注意しながら暮らしの環境を整えてください。
ピンバック: 温熱性能と感情の共生から省エネ効果と心理的ストレスを考える | Studio colife3
ピンバック: 愛媛・四国の建築 の省エネ効果は高気密高断熱だけ考えても難しい! | Studio colife3 気候から考える住宅