四国は西日本最高峰の石鎚山をはじめとした四国山地が南北の気候に大きな影響を与え、またその標高差が気候差を生み出し、建築物省エネ法の地域区分が準寒冷地に該当する地域区分4から、本州最高ランクの地域区分7の温暖地まで小さな範囲に多様な気候があります。
愛媛は石鎚山・面河渓をもち四国でも標高の高い久万高原町や旧別子山村で地域区分4、内陸の盆地型気候の大洲や内子町で地域区分5、宇和島や愛南町といった南予最南と松山市、新居浜市が地域区分7、そしてその他の沿岸の今治や西条、八幡浜などの市町が地域区分6となっており、人口の集中する街部の多くは温暖地です。


温暖地における建築の高気密高断熱の省エネ効果は、寒冷地と異なり必ずしも断熱性能を上げれば上げるほど効果が高まるわけではありません。
四国・愛媛の地域区分ごとの気候特性と該当する地域区分の建築の高気密高断熱の省エネ効果の特徴をみながら、どのような建築と暮らし方が温暖地という気候に合っているのかを考えていきたいと思います。
熱を逃がさない断熱と温暖地の夏
環境シミュレーションソフトを使って、四国・愛媛の各地域区分と3つの断熱性能の省エネ効果を比較しました。まず庇による日射遮蔽効果の違いです。
庇による日射遮蔽効果と気候の違い
図は左から地区区分4(松本/久万高原相当)から地区区分7(土佐清水/愛南町相当)までの気候データをもとに、平屋約74m2(約22坪)のモデルを利用して環境シミュレーションした結果です。各地区区分は三つの断熱性能別の結果を表示しています。
左から1.H28省エネ基準、2.ZEH相当、3.HEAT20 G3相当となっています。
冷房の設定温度は28℃、暖房の設定温度は20℃、平日日中も居住想定でリビングでのエアコンが稼働しています。

庇の有無によって、約7~15%の消費エネルギーが削減されています。この影響は温暖地の方がより強く現れているのがわかります。庇があると日射取得が減少してしまいますが温暖地の場合は日射取得で削減できるエネルギー量が限られているため、日射遮蔽をより強く意識することが年間のエネルギー消費量を下げることにつながっていることがわかります。
グラフでは地区区分7ではH28省エネ基準の庇の省エネ効果の方が、Heat20 G3への断熱性能のUPの省エネ効果よりも高くなっています。温暖地ほど省エネ効果に対しての庇の重要性が高くなっていることがわかります。

どの地区区分でも、断熱性の違いに関わらず、庇の省エネ効果は概ね同程度の効果が見込めることが読み取れます。庇の有無は外壁への雨掛かりの違いにも影響を与え、耐候性に大きな影響を与えるので、日射遮蔽以外でも効果的です。日本の伝統的な建築物に大きな庇が付いているのはこうした理由からです。

但し、四国は台風の通り道となる高知の室戸や枕崎や愛媛の佐田岬の強風地域のように風の影響を強く受ける地域があります。大きな庇はそれだけ風の影響を受けるのでそれを支える大きな部材が必要になりコストも掛かります。こうした地域ではコストバランスも配慮しながら、庇と窓配置・サイズと断熱のことを考えるのが良いです。
気候の違いと断熱性能の効果の違い
庇の重要性を理解したところで、さらに断熱性能の違いが各地区区分でどのように現れているかを細かく見ていきたいと思います。

図を読み解くと次のことがわかります

準寒冷地である地区区分4から地区区分5までは順調に断熱効果が表れているのに対して、地区区分6ではその影響が低減し、地区区分7では断熱性を上げる過ぎるとエネルギー消費量が増加していることがわかります。
この違いに影響を与えているのが各地区区分での冷房と暖房の比率の違いと、冷房と暖房での断熱効果の出方の違いです。
まず断熱効果が順調に表れている地区区分4(久万高原相当)や地区区分5(大洲・内子相当)よりも地区区分6(今治・八幡浜相当)や地区区分7(宇和島・愛南町相当)の方が、冷房の比率が圧倒的に大きいです。


暖房は冬の外気温がかなり低く、断熱効果で補っても室温が設定温度に対して低い状態を保ち続けます。冷房は夏の外気温の方が設定温度よりも高いので、断熱効果によって冷房の効果は高まりますが、合わせて断熱効果によって人や設備から発せられる熱、日射や外気温によって侵入した熱も逃がさず室温上昇効果も高まります。
この違いがグラフの暖房と冷房の断熱効果の違いとして現れているのです。
こう書くと温暖地では断熱は不要なのか?という話しをいただくことがありますが、そうではなく断熱性能をただ上げれば良いわけではなく、庇の有無の違いで確認いただいたように、快適な温熱環境を実現するためのたくさんの選択肢のなかの一つの手段だと理解いただくのが良いと考えています。
次のページでは四国の地区区分ごとの気温の特徴を見ていきます。具体的な設計のなかでの省エネ効果をみたい方は飛ばして3ページ目をご覧ください。

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