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山林 / 薪 で地域エネルギー自給はできるのか?-年間成長量と暖房給湯熱量の比較から

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久万の複層林

地域から見た 山林 の成長量とエネルギーの関係 愛媛の 薪 の 地域自給

これまで見てきたように、地域によって暖房エネルギーが必要な量は大きく異なり、森林の成長量も異なります。林野庁の都道府県別森林率・人工林率(R4)によると愛媛県の人工林は244,332haあり、日本全体の2.4%に当たります。日本全体で見れば温暖なエリアなので年間の森林の成長量は平均よりも高いと思われますが、手元にデータがないので、平均の数値を採用し、スギ・ヒノキの比重を使った場合、日本の年間の成長量のエネルギーは3.84億GJでしたので、その2.4%、921.6万GJが愛媛県の年間成長量のエネルギーです。

薪ストーブ、薪ボイラーの効率は80%として、737万GJです。四国の一世帯当たりの暖房給湯のエネルギー消費は12.8GJ/世帯・年なので58万世帯を賄える計算になります。愛媛県の世帯数は2024年で60万世帯ですので、96%の世帯分のエネルギーを人工林の年間成長量で賄えることになります。これはあくまで燃料として全てを使った場合のシミュレーションです。

では実際に愛媛の樹木がどのように使われているのか林野庁の木材統計調査/木材需給報告書を見てみましょう。全国平均と比較するとその特異さがわかります。全国平均ではおよそ60%が製材用、20%が合板用、残りの20%がチップ用(バイオマスやパルプ用)となっています。

それに対して愛媛はおよそ94%が製材用とほとんどが製材用になっています。これはm3単価の高い製材用で山林あたりの価格を高く保つことで経営力を付けることを目的としているためです。木材需給報告書の価格でもチップ用9,700円/m3と製材用スギ:17,200円/m3、ヒノキ:25,100円/m3でヒノキでは2倍以上の開きがあります。

こうした製材に集中している傾向は愛媛だけでなく四国や九州一体で同じ傾向がみられます。バイオマス発電が輸入材に頼っているというニュースが流れていたりしますが、現在の戦後から成長しきった丸太をチップで出す価格のインセンティブがないという現実です。こうした傾向を説明すると製材用の丸太を搬出している山林以外のところから出せないものか?という質問を受けます。

愛媛で地域に寄り添い木材を使う How to sustainably use local wood in Ehime」にて説明をしたように、樹木は人などの動物と同じように若年の頃の方が早く成長します。この違いは人の手の入る山林である人工林と人の手が入りづらい天然林との成長速度=循環速度の違いとなって表れてきます。林業も人の手によって循環の速度を速めて自らの方へ手繰り寄せて自然を産業化しているのです。

一般に燃料用の木材資源は建材用の木材資源よりも短いスパンで伐採されます。それは成長速度の高い時期を最大限に活用するためで、建材用が40-50年と言われるのに対して、20年程度です。それによて価格が半分以下でも、土地からの収量は2倍以上となり、手間も2倍になってますが、利を確保できるようになる、という仕組みです。

久万の複層林
複層林の林業地
小田の山林
間伐後の林業地
久万の山林
奥山


このように燃料用木材を供給する山林と建材用木材を供給する山林は同じ山林のように思えて、全く違う山林となっています。この燃料用、建材用の山林のなかでも木々が密集したもの、樹種の違い、単世代、多世代、様々な山林があり、それぞれに特徴があります。放っておいて燃料用の山林になるわけではありません。そしてそれは自然なものではありません、人工的に維持することで燃料用の山林となるもので、そのためには持続的に燃料用の木材を消費する消費地・消費者の存在が不可欠で、その消費と生産と自然が織りなす文化的なものなのです。

愛媛において、山林の成長速度、必要となる木材資源量の量的な側面でいえば、木材資源で暖房・給湯エネルギーを賄うことは十分に可能でしょう。どちらも熱エネルギーですので太陽熱も併用すれば、より効率的に余力を持った運用もできると思います。但しそれは、それを生産・消費させる流通網を組織して消費と生産を循環を構築した場合に限る、冒頭でライフスタイルを変えれば可能性があると述べたのは、そうした理由です。

乾燥させることの大事さ

これは建材として用いる際にも言えることですが、薪・木質資源を燃料として活用する際に重要になるのは木材を乾燥させることです。薪でキャンプをしたことがある人ならすぐにわかると思いますが、生木で水分を多く含んだ薪は燃えにくいということを理解できると思います。しっかりと乾燥させた薪を使わないと燃焼して熱を出すエネルギーが水分を蒸発させて飛ばすために使われてしまうため、エネルギー効率がすごく落ちる結果となります。先に水分を飛ばさないと燃えださないことは、紙コップに水を入れて火をつけるとよくわかります。

化学的に見ると水はH2OとH:水素とO:酸素が共有結合によって結び付けられて出来ています。水はこの結合だけでなく酸素側が極性を持っていて電子を引き寄せやすい状態になっており、もう一つ弱く柔らかい水素結合と呼ばれる結合力によってクラスターを形成しています。水から水蒸気へと変化させるには、このクラスターの結合を一つ一つ解いていく必要があるため、普通の物質よりもたくさんのエネルギーを必要とします。これが生木が燃焼時にエネルギー効率を大きく落とす原因となります。

山林から丸太を搬出して、製材し、乾燥して商品となるまでの過程で、一番エネルギーを必要とするのは、実は乾燥の工程になります。国交省(一般社団法人日本サスティナブル協会受託)と慶応義塾大学伊香賀研究室等で作成された建築用木材データベースの数値によると、およそ全体の70%~80%が乾燥の工程でエネルギーが使われています。

水分を飛ばすということが、いかにエネルギーを必要とするものかということが実感できます。こうした傾向はお米づくりでも同じように乾燥がエネルギーを消費します。これは仮に無農薬や自然農法、有機農法だったとしてもそうです。農林水産技術情報協会の調べによると乾燥が全体の半分程度を占めます。木材もお米も昔は太陽の光を利用した自然乾燥でしたが、社会へ消費者が満足する安定した量と品質の供給を実現するためには人工的な乾燥が不可欠となっています。

乾燥棚としての外壁 木材をカスケード利用する 納屋-みずと木とひ

納屋-みずと木とひ」は「風と火と農家住宅」の自然農法のお米農家のお施主様の一時的な納屋のプロジェクトです。数年後には経営規模の拡大のため大規模な納屋=倉庫が必要となるため、それまでの利用という少し変わった用途の制限を持っていました。

そのため後々別の用途へも利用可能なように木架構のシンプルながらんどうの平屋として(納屋としてもそれが好ましかったので)、外壁は背板と呼ばれる製材時に出る端材(丸太の中央から角材を取り出した残りの弧の部分)を実験的に利用しています。

この背板は以前はよく割り箸の原料として使われていた部位でしたが、現在ではチップにされて発電やパルプの燃料に回されることが多いです。この背板に簡単な加工して簡易な外壁材とすることで、製材所には加工手間賃が背板に上乗せされ、お施主様はチップ用の価格に加工手間賃を加えた低予算の材が手に入るようにしました。(施工部分は低予算にするには、まだ改善が必要そうなので、DIYで使うのが無難かもしれません)

木架構に使われた柱・梁などの構造材、そして外壁の背板は生木で現場に搬入されています。一時利用として使われる期間を乾燥期間として太陽と風の天然乾燥でゆっくりと水分を飛ばしていきます。本来であれば背板はすぐに燃料として燃やされて、二酸化炭素になって大気に還るところを、外壁としての利用、そして乾燥の時間を挟んで、遅延することで(専門的にはカスケード利用と呼ばれます)、より長い期間、木材のなかに炭素を閉じ込めておくことができ、水分が飛んだ燃焼効率の良い薪ができます。

一般に自然状態で樹木が枯死してから、土に還るまで、十数年以上の長い年月をかけてゆっくりと分解されていきます。そのようにして養分(炭素など)が少しずつ、次の世代へと引き継がれていきます。薪を暖房・給湯のエネルギー資源として考えることは循環型の資源特性、古くから使われてきている実績、エネルギー効率の観点から見て、利点が多いです。しかし速い利用は炭素貯蔵の観点から見たとき、枯死木の分解の速度からみても有効な手段とは言えません。社会はより速い速度で資源を回転させることで、より多くの資源を効率的に使う方向で進歩してきました。

その一方で炭素貯蔵の観点から考えるとき、私たちは社会のなかに、この炭素資源を、どのようにゆっくりと、しかし、より多く、貯蔵して、回し続けることが出来るのか?そのような観点が必要なように思います。

1家庭でのエネルギー消費 と 住宅 の関係 2地域・国によって異なるエネルギー消費 3地域から見た 山林 の成長量とエネルギーの関係 愛媛の 薪 の 地域自給

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