四国 の降雨の違いが建築を姿を変える
こうした環境の違いは建築をはじめとした人と環境とのあいだのかたちに影響を与えていきます。軒の出や軒先の仕舞い方の違い、雨を受ける外壁の作り方の違いとなって表れてきます。
降雨量の違いと外壁 水切り瓦、したみの有無
高知の南東の室戸岬側は安芸瓦が有名で、江戸時代に愛媛県今治市の菊間瓦の瓦工を招いたのがはじまりと言われています。
吉良川町はこうした瓦を外壁から水を離すための水切り瓦に利用した外壁の町並みが残り、重伝建に指定されています。この水切り瓦の外壁はこの吉良川町が有名ですが、高知市や四万十の方でも見ることができ、高知県内全域に分布しています。
県内全域で雨が多いということもありますが、富の象徴という側面も見逃すことができない要素だと思われます。



こうした雨風への備えは山間部でも見られます。「住まいの伝統技術 著:安藤邦廣、乾尚彦、山下浩一」にはそうした備えの伝統的手法がいろいろと掲載されています。
高知県に近い徳島県の剣山周辺は奥祖谷をはじめとして急峻な斜面にへばりつく様に集落が形成されていることで有名です。風雨も強く標高も高いため冬は雪が降ります。
こうした地域では風雨によって土壁が洗い流されるだけでなく、土壁内の水分が凍結して体積が膨張して内部から破裂する可能性もあります。
そのため土壁を風雨や外気から保護するために外部に漆喰や木壁など、もう一層 外壁=したみを設けるのが一般的です。
この地域では他では珍しく竹を巻くことで土壁を断熱し保護します。寒さの厳しい長野県茅野のあたりでも似たように土壁を木板で寒さから保護する手法が見られ、竹に似た素材では葭を外壁にまわす手法が佐賀県で見られます、北国の雪囲いの設えに似ています。
こうした したみを雨掛かりに設けるのが多雨地帯以外でも一般的ですが、雨陰の少雨地域ではしたみがない建築が現れます。
多くは作業小屋のようなものですが少雨地域のため優先順位として低いために したみが設けられなかったのか?そもそも不要だと考えて考慮されていなかったのか?
理由はわからないですが日本では珍しい、どちらかという中国の乾燥地帯やヨーロッパの地中海地方で見られるような納まりとなっています。
雨の影響を受けやすい場所、雨を遠ざける方法
降雨量の違いがわかりやすく出てくるのは軒の深さの違いです。
「雨仕舞のしくみ 著:石川廣三」に出典されているスウェーデンの国立建築研究所の壁面に雨量計を取付けた実験によると、雨は壁面の頂部と両端部に多く当たり、中央部と下部にはほとんど当たらない、そして幅広い面よりも幅が短い面の方が雨が強く当たります。


このように軒がない建物においては外縁部に雨が強く当たります。高層ビルなどではこの風の影響が大きくなり、圧力差が雨水の浸入への大きな役割を果たすために様々な対策が講じられています。
住宅のような低層の建物でも外縁部が雨あたりが強くなる傾向は同じですので、角の納まりが水仕舞いにおいてはとても大事になります。
ハウスメーカーなどで時々、ガルバリウム鋼板や光触媒の窯業系の場合、軒がない方が雨水が外壁の汚れを流してキレイに保てて良いという説明がなされることがありますが、
汚れと雨の浸入はまた別のことなので、ご自分の地域の雨の強度とも相談しながら、どちらを優先するのか十分に注意して選択いただくのが良いと思います。
日本の雨の条件ではこうした雨がかりの大半は弱い風のなかで生じているので、軒を少しでも出すだけで大きく改善されます。「雨仕舞のしくみ 著:石川廣三」のなかで、軒の出と雨掛かり部の関係を次のような式で表しています。
tanθs = Cs / Uw = hs / p
θs:雨掛かり遮蔽角(軒の出と雨に濡れない範囲が構成する角度)
Cs:雨の落下速度に関する常数
Uw:地上高さの位置の平均風速
hs :実質的に雨に濡れない範囲
p :軒の出
tanが出てきたりして難しい式のように感じますが、書いていることはいたって簡単なことで雨の垂直方向の落下速度と水平方向に作用する風の平均速度の関係が、軒の出に対しての壁面の雨に濡れない範囲に影響を与えるということです。
そしてこの式を理解する上で大事なことは、先ほど書いたように日本の雨の条件では地上高さの平均風速は多くの場合、あまり大きな値を取らない、ということです。
まず大雨の場合で、かつ強風が吹くのは台風などの例外を除くと大雨を横に追いやられるほどの風が吹きことはあまりありません。そして風で大きく横に押しやられる普通の雨の場合でも、年間でそれほどの風が吹くことは平均風速が5m/sを超えることも半分以下で、さらに10m/sを超えるのも10%程度と大半は大した風が吹くわけではないのです。
ほとんどの風が弱いということは、ほとんどの雨は垂直に近いかたちで降ってくるということを意味しているので、ほんの15㎝程度軒を出しているだけで外壁面の雨掛かり部はほとんどカバーすることができるということを意味しています。


平均風速の違いと必要な軒の出

妻面の外壁面の耐候性を強化した「風と火と農家住宅」
「風と火と農家住宅」ではスウェーデンの国立建築研究所の実験が明らかにした幅の狭い面:建物の妻面の風雨のダメージを考慮し、外壁の焼杉の厚さを他よりも厚く、およそ倍の厚さにしています。
この厚さは「愛媛で地域に寄り添い 木材 を使う」の記事にも書いたように焼杉の製造過程で他の既製品の外壁材の厚みに合わせるために削ぎ落していたものを、削ぎ落さずに工場でそのまま焼いてもらうことで厚く耐候性が高く、かつ無駄な廃棄物をなくすことで、山の経営者へその分より大きな利益を戻すことを可能にしています。
またケラバは合板を長手方向に持ち出すように貼ることで455㎜跳ね出し、外縁部の雨を遮蔽しつつ、軽やかな屋根形状を成立させています。








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