雨が多い高知と雨が少ない高松の原因は? 四国 の気候と地形と建築

四国 の気候の面白いのは、日本でも有数の年間3000㎜を超える降雨地帯と日本で有数の年間1000㎜程度の少雨地帯が隣り合って存在しているところです。この 雨 の結果を導いている仕組み・構図はその巨大版・世界版である世界の屋根ヒマラヤ山脈の地形と地球の動きが気候の原因となっています。モンスーンと呼ばれるインドの南側の海からヒマラヤ山脈に向けて吸い上げられる湿った空気によって、東南アジア、東アジア、そして日本が雨に恵まれた緑の多い環境となっています。縮小版の四国では四国山脈がヒマラヤ山脈の役目を果たすことで高知にたくさんの雨をもたらしています。巨大版は日本が中緯度の本来なら砂漠が多い立地にありながら、雨に恵まれ四季に富んだ気候を持つことの理由にもなっています。

ヒマラヤ山脈とモンスーン・雨陰砂漠
ヒマラヤ山脈とモンスーン・雨陰砂漠
ヒマラヤ山脈の縮小版としての四国山地

ヒマラヤ山脈の裏側ではシルクロードの砂漠地帯が生まれていて草木がほとんど生えない環境が生まれています。これは夏は南の海からの暖かい湿った空気はヒマラヤ山脈によって阻まれて山を越えた乾いたカラカラの空気が下降とともに気温を上げてもたらされるため乾燥します。高松をはじめとした瀬戸内海側の夏の少雨はこれと同じものです。

冬の瀬戸内海側の少雨は直接的には同じものではないですが、やはりヒマラヤ山脈との関係を持っています。

冬は北極からの冷たい空気が入り込み、それがまたヒマラヤ山脈によって阻まれるために山脈の北側に停滞するため地表面を冷やします。冷たい空気は湿度をほとんど空気中に含むことができずカラカラになります。地表面は氷点下になっているため地面からの水蒸気の供給もなく、地表面が冷えれば冷えるほど下降気流が発達し、空気が下降すると気温が上昇し乾燥します。この空気が地球の大気循環にのって東にながれ日本海で水分を得ることで日本に雪がもたらされます。瀬戸内海は今度は中国山脈によって阻まれ、水分を落とした冷たいカラカラの空気がまた下降してくることで気温が上がり乾燥します。

このように気候が大きく異なる四国では建築のかたちも地域によって変わってきます。雨が多い地域にはその対策が施されます。高知側のそうした建築はむしろ同じく中央構造線の南側の地質帯に属した多雨地帯である紀伊半島と似ています。植林やミカンなどのように真言密教という宗教的な交流ももしかしたら関係があるのかもしれません。そうした地域を超えた類似性も含めて見ていきたいと思います。

まず巨大版で雨の地形の関係性を理解した上で、四国の気候を見ていきたいと思います。

ヒマラヤ山脈が降雨地帯と砂漠地帯をつくる

日本に雨が降る仕組み ヒマラヤ山脈から偏西風によって東アジアへ運ばれる雨雲

こちらの動画は、世界の風の流れ、雨雲の動き、気温の変化を知ることが出来るサイトWindfinderでの1週間の変化を映像化してみたものです。映像を見るとアラビア海・ベンガル湾の海(インドを囲む海)で雨雲が発生して、ヒマラヤ山脈(中国・ミャンマー・インドのあたり)の方へと引き寄せられて、日本の南西あたりにある台湾を通ってそれが日本の方へと動いてくるのがわかります。この動きの原因は地球が球形の惑星であること、アラビア海・ベンガル湾の海とヒマラヤ山脈、そして日本列島の地球上での配置にもとづいています。

次の映像を見るとヒマラヤ山脈の南側が真っ赤になっています。日中の太陽によって暖められた空気はどんどん上へと上がっていきます。その空気が上へ逃げてしまって空いたスペースに周囲から今度は空気が流れ込みます。この力が世界の屋根ヒマラヤ山脈という巨大なスケールで起こるため、アラビア海・ベンガル湾の熱帯の海の温かく湿った空気がどんどんヒマラヤ山脈へと引き寄せられますが、高いこの山脈を湿った重い空気は超えることが出来ません。

アラビア海・ベンガル湾とユーラシア大陸の夏の気温変化

この時日本列島、ヒマラヤ山脈の緯度が一つ重要な要素となります。日本列島、ヒマラヤ山脈がある30度~65度の中緯度帯は偏西風と呼ばれる西から東向きへと吹く風が吹いています。これは地球が球形をしていて、回転していることによって生じています。球形をしているため回転軸に対して中心から直角をなす面、いわゆる赤道の部分が一番光を=熱を受けて、逆に回転軸のある北極・南極が一番光を=熱を受けません(実際には地球は軸が傾いているため季節変化が生まれ、その時々で関係はより複雑に変化します。)。

この赤道と両極との太陽からの光=熱量の差を均質にしようと流体(空気、水など)が動きます。地球が回転していなければ赤道から両極へ真っすぐ向かうのかもしれませんが、回転しているため慣性力が働きます。この時の慣性力をコリオリの力と呼び、風の向きに対して時計回りに直角(北半球の場合は南から北に対して時計回りに直角なので、西から東)に働きます。この西から東方向への力を受けた大気循環の風が「偏西風」です。この偏西風がヒマラヤ山脈という地球一番の吸引力を持つ山へ引き寄せられた雨雲を西から東へと運び、東南アジアや中国、そして日本へ運びます。

地球の大気循環と地域の気候_低圧帯・多雨と高圧帯・乾燥
中緯度高圧帯は東南アジア・東アジアとアメリカ南部以外は乾燥して、世界の主要な砂漠が存在する地域 航空写真:pixabay を編集

通常、日本がある中緯度帯は赤道側の低緯度からの空気循環と高緯度からの空気循環が重なり合って高気圧になりやすく(中緯度高圧帯)乾燥して砂漠になりやすいそうなのですが、ヒマラヤ山脈のモンスーンの影響で砂漠にならずに四季のはっきりした気候となっているそうです。

こうした緯度による気候の違いはアメリカ大陸を見るとはっきりします。北アメリカのロッキー山脈、南アメリカのアンデス山脈が太平洋側からの湿った空気を遮り、乾燥した空気を裏側へ送り込みますが緯度によって裏側の状況は異なります。低圧帯である熱帯付近のアマゾンはアンデス山脈の裏側やカナダのロッキー山脈の裏側でも緑が茂り、高圧帯であるロサンゼルスのロッキー山脈の裏側のニューメキシコやアリゾナ、アルゼンチンのアンデス山脈の裏側では砂漠、太平洋側には緑と違いがはっきりと表れています。

瀬戸内海の少雨・乾燥はアメリカ大陸のような明快さはありませんが、①本来なら乾燥する地域にあり、②そこにモンスーンによる雨雲が入り込むが、③山によって阻まれることで、その裏側が山からの乾燥した空気の流入もあり乾燥する、という地球全体の大気循環と地域の地形とが関係し合うことで生まれているのです。

山脈の裏側にできる雨の降らない乾燥地帯

上の地図は国土地理院の地図を標高1000m以上をオレンジ、2000m以上を赤で塗分けたものです。インドから中国にかけての赤色の塊がヒマラヤ山脈です。下の地図でみると、ヒマラヤ山脈の赤い塊から右側(東側)へ伸びるオレンジの領域よりも下側(南側)に緑の地帯が、赤い塊、オレンジの塊に黄土色の地帯と明確に分かれているのに気づきます。中緯度の偏西風はアジアではこの赤からオレンジの塊の山々をガイドとして海からの水が山々へと引き寄せられ、西から東へと流れていきます。そのためユーラシア大陸の南側の海から暖められた湿った空気が高い山脈に阻まれて雨として降り注ぐ裏側には雨が到達出来なくなります。このような山脈に遮られたエリアが砂漠になったものには雨陰砂漠というわかりやすい名前がつきます。

西日本に春先にユーラシア大陸から飛来する黄砂の砂はこのヒマラヤ山脈からの裏側に生じた雨陰砂漠であるタクラマカン砂漠やゴビ砂漠の砂が、偏西風に乗って日本まで届いているものです。

このように日本に降る雨や砂はインドから日本までのアジアの地形や気候に大きな影響を受けています。日本の生活は貿易による経済のつながりだけではなく、地球の大気の動きによってもつながっていることが見えてきます。

1ヒマラヤ山脈が降雨地帯と砂漠地帯をつくる 2四国山脈 がつくる 降雨地帯と雨陰砂漠 3雨の影響を受けやすい場所、雨を遠ざける方法 4雨の影響を受けやすい場所、雨を遠ざける方法2 雨除け板

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