脳から 個性 と あこがれ を見直す、自分たちに馴染む家づくりとは?

なぜ多くの人が「もっと狭くてよかった」と思うのか? – 家づくりの見えない落とし穴

松山市で住宅を建てられて長年住んでこられた方々にお話を伺う機会があり、ヒアリングをした結果、共通しておっしゃっていた回答が「家がもっと狭くてよかった」というものでした。それに対して建てるときになぜ大きくなったのか?と質問したところ「若いころは大きな家にあこがれる」「CMや雑誌やドラマに出てくる家はみんな大きな家」とと、おっしゃっていました。

はじめての家づくり、で一生に一度の家づくり という条件は建て主さんたちにとっては過酷な条件で、なにを手がかりに考えれば良いかも、手探り状態にあると思います。

深く考えていないあこがれやイメージで決めたことから生まれた後悔については自分のなかで消化しきれていなくて、後悔したという感情が残り続けてネチネチと後を引いている印象を持ちます。

あこがれをきっかけに自分で深く考えて決めたことにも後悔は起こります。ヒアリングのなかでは床の色を他の家族や設計者の反対を押し切って決めたが後悔しているという方がいました。

しかし後悔の質が違っていて、潔く割り切れている後悔で、後に引いていないように感じます。あこがれのプロセスで後悔の質が変わるように思えます。

スマホ・TVCMと家づくりはあこがれを誇張し、個性 が あこがれと同化する

最新の脳科学の研究結果では、喜びや幸せを感じるホルモン分泌の基礎条件には自分自身や他者への理解共感にもとづいた意思決定が重要な役割を果たしていることがわかっています。

古くから倫理や哲学で言われてきた主体性の重要性が科学的にも証明されてきています。安易な固定観念に意思決定を委ねるとこうした喜びや幸せのホルモンを逃がしてしまいます。

こうしたホルモンは自己肯定感への大事な鍵です。私は家づくりにおいても自己肯定感は非常に大事な要素だと考えます。

「子どもは親の言うことを聞かない、けど、親のやることを真似る」という話しを色んなご夫婦からお聞きします。

さらに真似て欲しくないことを真似る、というように形容される方もいます。大人になるということ、親になるということは「真似される」側に立つということだと実感させられます。私たちは無意識的に真似たい・真似たくない・真似られないと感知する相手の特徴のことを「個性」と呼ぶのだと思います。

後悔しない家づくりの暮らしとは、

  1. 他人がつくった固定観念に自分の意思決定を委ねず
  2. 自分の個性を理解した意思決定によって、喜びや幸せから、自己肯定感を感じられる
  3. 人に真似られても構わない暮らし、子どもに真似られても構わない暮らし

と言えると思います。

あこがれと二種類の後悔

あこがれとは、他の人の良いところを自分に取り入れたい、真似たいと思う感情と言えると思います。ヒトの脳は、このあこがれを最初の起爆剤としてモチベーションを高めながら、相手を理解し、自分に足らないことを理解し、真似をしていって、あこがれに近づいたと感知したときに喜びのホルモンが分泌されて達成感を得ます。

あこがれとは自分を理解する上でも、相手を理解する上でも大事な感情であり、決して否定的に捉えるものではありません。家づくりのなかでも建て主さんがどのようなものへあこがれを抱いているかという情報は非常に大切なものだと考えます。

後悔とは、このあこがれのプロセスの最終的な達成感/喜びホルモンが得られなかった状態であると言えると思います。意識的、無意識的に関わらず期待していたものを得られなかったことによる喪失感です。

あこがれのプロセスの途上で生まれる後悔を妬みと言い、妬みのなかにも目標達成のモチベーションとなる妬みと、目標達成へ向けられずに留まり続ける妬みの二種類があるように思えます。

ネチネチ後を引く後悔 と トラウマ・依存症との類似性

ネチネチ後を引いている後悔は、こうした留まり続ける妬みのようにあこがれのプロセスの途上に留まり続けている状態だと言えるように思えます。

それに対して、潔く割り切れている後悔とはプロセスは完了していて記憶の中に過去のこととして片づけられている後悔です。

こうした留まり続ける未消化な感情の極端な例がトラウマだと考えられていますから、ネチネチ後を引いている後悔とは弱いトラウマとも言えるのかもしれません。

二つの後悔の違いはあこがれのプロセスが途上にあるか、完了しているかです。意識的か、無意識的か、強いか弱いか、はわかりませんが途上にある人はあこがれのスイッチが入りっぱなしになっている状態です。

トラウマを持つ人や依存症を持つ人がトラウマや依存の対象に類似したものを感知・認知したときに当時の感情が呼び出されるように、あこがれとのギャップを見たときに、後悔が呼び出される状態なのだと思います。ネチネチ後を引いている原因とは、このようなところに一つはあると考えます。

トラウマや依存症では、プロセスを完了させるためには、自分と対象と向き合い、分類し、理解し、記憶を上書きしていくことが有効だと言われています。

そうすることで感情のスイッチのコントロールができるようにしていきます。家づくりでネチネチ後を引く後悔をしないためにも、しっかりと自分たちやあこがれと向き合っていって欲しいと思います。

同じことは建築家や設計者の側にも言えて、自身の主義主張や世間の流行、建築主の言葉の表面に惑わされずに、真摯に自分自身とそして相手と向き合って欲しいと思います。

「もっと家が狭くてよかった」という言葉が本当の後悔の原因を指しているのかは、今回のヒアリングでははっきりとは分かりませんでした。建物の大きさの問題以上に、あこがれた「広い家」が持っていたイメージが達成されない現実や言葉にできないあこがれを、このような言葉で表現していて、それがたまたま「もっと家が狭くてよかった」という共通の言葉となって表れているようにも感じます。

1あこがれのプロセスで変わる後悔の質 2片付けからみる個性 3MBTIタイプ別のLDKのかたち・空間デザインの好みの傾向 4MBTI タイプごとの家具レイアウト例 5若いときはスペシャリスト、年を取るとゼネラリスト

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