高気密高断熱 の建物で窓を開ける 風通し は効果があるのか?
自然に寄り添い、自然を手繰り寄せる 風と火と農家住宅

「風と火と農家住宅」は自然栽培のお米をつくる松山市の米農家さんの農家住宅です。重信川にほど近い敷地はその河の軸にそって流れる東西の卓越風が特徴でした。自然の力でお米をつくる農家さんにふさわしい、自然の風を利用した住宅を目指して設計しました。
まず先ほどの卓越風を現地調査と気象データから割り出し、風通しのための基本方針を定めます。この際に、周辺の古民家の自然環境に対する考え方も参考にします。前述のように東西軸の風が吹くことがわかりましたので、東西に長い敷地に対して、平行して東西に細長い建物を計画しました。東側にある近くの大きな体育館の影響が懸念されましたが、現地での計測・風のシミュレーションの結果から大きな影響はなさそうだと判断できました。
計画は東西に対して門型の構造フレームを並べることで、風洞のように風の道を建物内に確保し万遍なく風が通り抜けるようにしました。それ以外の面は南面に採光用の大きな開口部を設けるに留め、最小限に抑えることで断熱性を損なわないように配慮しました。
建物の外皮は省エネ基準を十分に満たす仕様とし(ZEH基準)、配管回りなどの気密に注意して工務店さんにも施工頂きました。冬は薪ストーブを利用し、薪の熱エネルギーを出来るだけ逃がさないようにしっかりと断熱されています。


このように自然の風に寄り添い、自然の火を手繰り寄せる、 断熱と風通しの両立を目指した住宅になります。
経済の発展はつねに、人々が物を作る代わりにこれ以後買うことが出来るようになる、ということを意味してきた。市場をこえている使用価値が商品に置き換えられるのである。経済の発展=開発はまた、商品なしに暮らすことを可能にしていた諸条件が物理的・社会的・文化的環境から消え去ったがゆえに、まもなく人々が商品を買わざるを得なくなるということも意味している。そうなると環境は、物資やサービスを金銭で買う能力のない者によって使用されることがもはや不可能となる。
p.24 シャドゥ・ワーク 著:イリイチ 訳:玉野井芳郎・栗原彬 岩波文庫
開発はたしかに私たちを環境から切り離し、商品に依存させます。しかし開発の仕方によっては、環境の価値を高め、開発と環境の双方の良さを引き出しあうことも可能であると信じています。
関連情報
風通しを良くするための考え方については「愛媛・松山で自然の 風 を利用する暮らし方-環境を読み、風を建築へ導く」の記事も合わせてご覧ください。田園地帯、住宅地と異なる環境における風通しの考えを事例を通してまとめています。(前半は瀬戸内の海沿いに見られる海陸風の考え方です。興味がない方は読み飛ばしてください。)
