雨の少ない愛媛と香川の水の知恵とランドスケープデザイン

古井戸を活用した 風と水のあいだの家

「風と水のあいだの家」はそうした全国的にも稀な豊富な湧水原がある地域でした。そして、その湧水原の魅力を体感できることをお施主様も望まれていました。

周囲の湧水の水温を調査すると、30度を超える夏の日中でおよそ20度程度(最低計測値18.6度)、0度に近い冬の早朝でおよそ10度程度(最高計測値14.1度)を記録しました。年間を通して外気よりも安定した水温を保っていることがわかりました。この安定した水温の湧水を建物の周囲に水盤として張ることで、水盤の視覚的な心地よさとともに周辺熱環境を安定させることを考えました。

計画を進めていく中で敷地内にあった井戸が古いことがわかり、新たに採掘する必要が出てきたため、古井戸が余るかたちとなりました。この価値のなくなってしまった古井戸を建物の周囲の水盤の水源として有効活用し、新たなかたちを与えています。

風と水のあいだの家_水温調査
風と水のあいだの家_水温調査_夏
風と水のあいだの家_水温調査_冬
風と水の間の家 House of wind and water in the old town。松田祐介、studio colife3 池内健が設計した風と水の間の家のリビング ダイニングを水盤越しにみる。敷地外周部はポリカーボネイドの塀で囲われ、建物周囲を地下水の水盤に囲む。梁下のポリカーボネイドの垂れ壁は、この地域の卓越風を取り込む役割を果たす。新建築住宅特集2020年3月号掲載。
風と水の間の家(新建築住宅特集2020年3月号掲載) House of wind and water in the old town リビングダイニング
photo : shinkenchiku-sha

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